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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

家来どもも案じていよう。はや帰らねばならぬ。……藤夜叉、そなたも戻れ」

「帰りまする」

やっと、彼女も身づくろいして、その黒髪を、指で梳いた。

「そして、小殿とは、いつまたお会いできますか」

「さいぜんも言ったではないか。――時が来たら、きっと、そなたも不知哉丸も、身のそばに迎えてやると」

「待つことは、悲しみますまい。けれど、いつ頃と思っていたらよいのでしょう」

「さあ、それは」

「一年か二年の先には」

「いや分らぬ」

「では、御大望が成ったあかつきにはと、仰っしゃるのでございますか」

「なに」

きっと、眼かどを硬めて。

「そなた、大望とは、どんな意味で申したな?」

「お身にかかわる大事、つい知りました」

「聞いたのか、右馬介に」

「いいえ、ここで待つうちに」

藤夜叉の眼は賢い。大勢の小屋衆の中で揉まれてきた鋭敏さだろうか。高氏の眉に、すぐその胸を読んで、

「が、御安心なされませ。小殿のお不為になるようなこと、死んでも、人に洩らすことではございませぬ」

いわれぬ先に、われからいった。

「……けれどただ、余りに先は待ちきれませぬ。今は、今夜のような短い逢う瀬もうれしいのです。