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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
かねて、警戒のため設けておいた鳴子が、水欄の辺で、とつぜん魔の笑いみたいにカラカラと音を立てたからだった。
「すわ」
と、白けわたる一同の顔を措いて、俊基は、
「足助(次郎)。観てまいれ」
と、すぐいいつけ、それから、静かに微笑して見せた。
「ここへ六波羅者の近づきうるはずはない。立ち給うな、立ち騒いではまずい。そのまま、そのまま」
出て行った足助次郎は、すぐ席へもどって来た。
息をつめていた面々も、彼の平静な物腰に、まず胸をなでおろした態で。
「足助、何の知らせだったのだ。いまの鳴子は」
「大事はございませぬ。河原に立たせておいた見張の一名が、近くに怪しき男の徘徊するを見かけ、慌てて鳴子を引いたものと申しまする」
「なに、怪しい男が」
すぐ一同の神経は戦ぎあって。
「して、その者は?」
「ただちに、ほかの数名が、追ッかけましたなれど、つい捕えそこねた由でござりまする。が、六波羅者でもなさそうなとのこと」
「とは申せ、何やら、安からぬことではあるの」
消えない動揺のいろを見て、日野俊基は、言い出した。
「いや、折もよしと申すもの。あらまし、御報告はすんだ。ここらで、いつもの無礼講へ移るとしようではないか」