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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
「うまいわ、夜這いの法印」
「法印は、夜這いも、仕馴れており申せば」
やんやと、弥次る。
黄いろな褌一つの裸僧は、暗がりの人妻の閨を、手さぐりで窺うような所作よろしく、
冠者は妻儲けに
来んけるわ
構へて
二タ夜は寝にけるわ
唄の抑揚もおかしげに、思い入れたっぷりな踊りを繰り返す。――大勢も手拍子あわせて、合唱する。
三夜といふ夜の
真夜中に
袴どりして
逃げけるわ
――転けけるわ
わざと褌の尻尾を長く垂れ曳いて、裸僧はクルクル舞を踊りぬく。
すると、遊女の一人が、褌の端をつかまえて、引っくり転す。法師は大ゲサに蛙腹を仰向ける。満座はとたんに、爆笑となって、高坏が仆れるやら、その隙に、目ざす妓を抱えるやら、そろそろ、無礼講らしい。
武士は武士で、これまた見かけによらぬ芸を出す。公卿はもとより隅におけない。すべて男性には、こんな半面もあってこそ、まことの男性、まことの人間なる者であると、自他共に、誇っているかのようである。
催馬楽、田楽、諸国のひなぶりなど、およそ毎会ここでは出つくしていた。古今、宴会芸術の芸統には、そう時代の違いもないらしい。その頃流行った“蝦すくい小舎人”は後のどじょう掬いだし、遊女や白拍子のする“屏風隠れ”も“住吉拳”も、また男の赤裸趣味や社交性とひとしく、数百年の変化もない。