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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

「はい」

と、相手の声をたよりに膝をすすめる。

ちょこねんと置いた姿の坐り癖も、小首をかしげる盲癖も、小法師だけに可憐しかった。

「ほんに又太郎さまは、よく私の胸をおわかり下さいます。仰せのとおり、旅のお邪魔ではございましょうが、国許の母へ、これを届けていただきたいと存じまして」

「手紙か」

「手紙やら何やらでございまして、中には都で求めた香苞だの琵琶の切れ糸なども入っておりまする」

「琵琶の切れ糸」

「ええ。母がそれを見れば、覚一が、琵琶の師についてこんなにも勉強しているかということが、まざとお分り下さるにちがいございません」

「おう、いとやすいこと。かならず母者へ渡してあげる」

覚一の手から一封の物をあずかって、

「ほかには」

と又太郎は、この小さい不愍な従弟を、宥りようもなくその肩へ手をのせた。

「ありません……」と、覚一は首を振り「こまごま文のうちにしたためましたから」

と、言い澄ました。

そしてまた、自分のことばを追っかけるように。

「でも、又太郎さま。あなたのお眼で見た私の姿をそのまま、どうぞ母へおつたえ下さいまし。覚一は、このように倖せでおりますことも」