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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

宴はいつも、二更三更(夜半)に及ぶのが慣い、なぜ、うごく」

「登子が戻りたがっておりますゆえ」

「登子が」

高時のきらつく眼が、無遠慮にふたりを撫でた。

「はははは。この男、虫食い瓜に似もやらず、中実は甘いぞ。さては閨急ぎか」

「これは、きつい、おからかいを」

「道誉、道誉」

身を反らして、高時は、右がわの列座にいる佐々木道誉を眼で拾って。

「――閨いそぎの若夫婦は、はや戻るなどと申しおる。そちは、今日の馳走に、高氏へ何やら見せたいものがあるとか申していたではないか。帰してもよいのか」

「これは、したり」

響きに応じるような調子で、道誉も、高時に次いで、派手にいった。

「太守をはじめ、満座すべては、みな其許おふたりのために、およろこびを共にしているものを。……そのかんじんな主賓が、さきに座をお立ちとあっては、これや、どうもなるまいて」

それに相槌打つかのごとく、近くに居流れていた佐介五郎、淡河兵庫、斎藤宮内、城ノ介師時なども、酒気にまかせて、

「せっかくの座もしらける。まあ、おられい」

「御興はこれから。――太守にたいしても、不礼ではあるまいか」

「高氏どの。まあ、もう一献」