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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
小ッこい洟タレ天狗や皮膚病天狗が、手に笹の枝を打振り打振り、口々に、
……えうれい星
えうれい星
怪雲殿の
えうれい星
と、歌うのだった。しかも声のありッたけ、歌い狂い、舞い狂い、往来の女衆には悪さをするし、街の迷惑などもかまッたものではない。大人たちが、防衛のため、大喝したり、水でもぶッかけると、むしろ彼らは本懐な気分にでもなるのか、一そう狂舞の図を描いて、
天知る
地知る
天狗知る
魔界外道は
火のくるしみ
水くれ 水くれ
水をくれーいッ
と、絶叫をくりかえし、その果て、わアッと囃して逃げ出すのである。
いったい、こんな童戯が流行り出した根元は何なのか。たれが彼らに教えたのか。
いや、現象を見てからの、そんな、せんさくなどは愚にちかい。上が下へ映るのは、月と露、雲と地の翳り。なんの不思議もないことだ。民の諷謡は、自然に湧くものだとは、唐宋の古史もいっている。なにも知らないはずの民土の耳目ほど、何でも知っているものはない。
が、往々には、誤まった、いわゆる巷説もよく弄ばれる。たとえば、近来の「……執権どのは、先ごろ、天狗に憑かれて御他界されたそうな」などは、その類であった。