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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

の彼。その高時は、いよいよ公にも病閑をえて、遊び呆うけられるわけである。

おなじ三月十六日。

次代執権は、金沢貞顕ときめられたが、何か内紛の結果だろうか、四月に入ると再度、

赤橋守時を執権に、北条維貞を連署となす、との幕府改組が三たび布告された。

偶然ではあるが。

鎌倉改組と、わずか二日ちがいで、朝廷でも、改元ノ儀が行われ、この年を、

嘉暦元年

とするの令が、天下に布かれた。

が、すべては単なる時事にすぎず、事そのものに、格別な意味はない。けれど、高氏には、一驚を覚えられた。

妻の兄守時が、執権の栄座に昇ったなどという感慨ではない。――百日も前に、これを積良の別亭で言っていた道誉の予見の誤まらぬことだった。

「ふしぎな存在」

このばあいにも、彼は、それを感じる。

世には、機密のウラを嗅ぎ知っては、それをひけらかすのを愉楽とする事情通もなくはない。しかし、道誉のは、わけが違う。義貞をおいて、あの場所、あの鼎座での、言である。

いかに道誉が、日ごろ、高時のふところ深くに住み、柳営を中心とする枢機のうごきだの、重臣一人一人の人物観などにも、常に眼をくばっているかが推し量れる。