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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
「よせとはいわぬ。一年ほど待て。そして琵琶はまず措き、みっしり一年ほどは、学問せい」
と、いう意見。
「はい」
以来、伯父の指示にしたがって、覚一は、学業の師に就いた。
師匠は五十二、三のお坊さんであった。二階堂の永福寺に近い“南芳庵”がお住居だった。
子供ずきらしく、とくにまた、盲目の覚一を憐れんでか。
「ほ、来たな。今日は一人で来たか。いつも母者に手を引かれている気ではいけぬ。いッそ一人で歩きつければ、今に、目明きよりは、よう見えて来るはずだぞよ」
経書の講義、禅のはなし、きびしい中にも慈愛をもって、授けてくださる。
だから覚一も、しごく気やすく馴じんでいたところ、或る折、庵の下僧に、師の坊の経歴を聞かされて、彼は、まったくびっくりしてしまった。
師の名は疎石、夢窓と号して、寧一山の会下に参じ、仏国禅師の法脈をつぎ、今や、五山第一の称えもあるとか。
諸国、居る所に禅風を興して、また飄として去るといった風なのを――近ごろ、北条高時の生母覚海夫人が、やっと捜し求めて鎌倉に請じ、それでしばらくは、ここに留まっているものの、都からも、勅諚再々で、後醍醐天皇のお招きもしきりである。