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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
「へえ、面白いとお聞きでございましたか」
「むむ。いったい誰が、そちの申したように、賄賂を貪りおるだろうか」
「へへへへ。誰がって、数えきれたもンじゃございません。小物大物、まああなたさまがたの方が、よくご存じでございましょう」
「さよう。では、わしの方から話してつかわそうか」
「ぜひ、ひとつ」
「よろしい。舟にも書物にも、わしも折ふし飽いたところだ。談義してつかわす程に、その酒を一碗、これへ持ってまいれ」
「えっ、仲間どものこの酒を、召上がって下さると仰っしゃいますか? ……」
公卿もさまざま。さても風変りな公卿を見るものかな。
――こなたの足利又太郎は、舟べりに凭せていた身を起して、思わずその者の鮮烈な存在へ、好奇な眼を凝らしてしまった。
「……うまい」
と、一碗の酒を、見事、息をつかずに飲みほした当の若公卿は、気を呑まれている無頼の若雑たちへ向って、さらに、
「もう一献酌いで欲しいぞ。なみなみと酌いでおくりゃれ」
と、ほほ笑んでいう。
それをも、ぐっと干すと、さすが頭巾笠のうちの眼もともほんのり桜色に染まった。さて、約束の談義とは、それからの気概りんりんたるものだった。