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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

すると俊秀は笑って。

「いや、もう遠くはない。そこの加賀田川を渡れば、すぐ灯が見えよう。人に会うのは好まぬお師だが、ほかならぬあなた方ゆえ、お連れ申すわけ。お会いになってみればわかる」

なるほど、加賀田川というのか、まもなく渓流の音が耳を打って来た。短いが、蔦葛の桟橋がある。南宋画などによくある隠者の門といった風な山荘の灯を見たのは、そこを渡って幾らも歩かないうちだった。

「ちと、お待ち下さらぬか」

中木戸の辺に二人をおいて、正季たち三名は、わが家のように玄関へかかった。

五郎だけは、縄付きを曳いて納屋の横へかくれた様子。――はて、誰の家やら? と、外に佇む菊王と頼春には、いよいよ判らなくなっていた。

「……が。何と閑雅な」

棟数、深い奥の灯、広いらしいが、どう見ても、いかつい土豪の構えではない。あくまで隠者めかした静けさだった。

その晩。

菊王と頼春は、山荘の主に、ひきあわせられた。

正季たちが、途々、師とよんでいた人である。

「よう、お越しなされた」

気がるな口調で、

「てまえが、この山家のおやじ、毛利時親でおざりまする」

と、若い二人が恐縮するほど、頭も低い。