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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

俗にいう杓子面で、人なみ以上、鼻も低い。

両のモミ上げは、わざとみたいな縮れ毛が渦を巻き、半白の髪を、むりに結い上げているのである。この年配で、こんな世話のいる蓄髪を敢てしているのは、世間流行の“入道”の態が嫌いなのかもわからない。そんなところにもこの人の「――俺は俺だ」と、している風がうかがわれ、何か心に触れでもすると、鏃のような眸がうごく。

「わしは、早寝の習慣でな」

夜食がすむと、時親は客にかまわず、はや眠たげな催促をみずからして。

「朝起きには負けぬが、夜はかなわん。あんた方も、早う休まっしゃい。明朝またお目にかかろう」

そういって、さっさと寝間に入ってしまった。

正季たちも、この夜はみな、山荘に泊ったらしい。――翌朝、頼春と菊王が眼をさまして、裏庭の流れへ、朝の嗽いに出てゆくと、もう叢竹にかこまれた書院風の一室では、若い人々の気配にまじって、時親の笑い声もながれていた。

毛利時親

ふたりには、この名が、ゆうべからの謎だった。今も、顔見合せて、

「なあ菊王。何者だろう、ここの主は」

「どうも、分りませんな。世にいう隠者とでもいう人でしょうか」

「隠者にせよ、名ぐらいは多少知れていそうなもの。