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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

北条幕府の腐えや秕政は、世の周知である。――と、するかの如く、高氏の眉がびくともしないのを見ると、

「土岐どの、ここらで御辺の胸も」

と道誉は、言を横へ譲ッた。

待っていた唇である。土岐左近頼兼は、あたりを見まわした。眼も充血している。

「事、洩れては一大事。かつはおそれ多い。高氏どの、誓ッて御他言なきように」

のどの辺を出きれぬ小声や、そのわななきざまを見ると、高氏はかえって、冷静になった。

「御念までもない。しかし御不安なれば、聞かずとも」

「いや、申さいでは天意にそむく。足利殿も天皇領の御住人。……そこはかとなく、待てる時節が来ているとは思しめさぬか」

「どういう時節が」

「これはまた、あっぱれな、おとぼけ顔ではある」

打ッちゃられたように、左近はツギ穂を失って、どぎまぎしたが、その反動をこめて、また。

「由来、名門足利家の御血統が、北条氏より高く、へたをすれば、北条家の門地を超ゆるものあるを恐れて、わざとお家を不遇な地方におき、それが代々御家運の衰微となって、今日にいたったことは、おん曹司として、よもご存知なきはずはおざるまい」

「ぞんじておる」

「ならば」