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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
「……むりもない」
と高氏は自分へつぶやく。
その足もとは、まんさんとして、彼の意のままには運ばれて行かない。ただ誰かに体をささえられていることだけはわかっていた。
宴でも、始めの間は。
……これは気をつけよう。佐々木道誉や左近らが、わしの性根を見てやろうと、寄ってたかって杯を強いるものに相違ない。すでに宵からの酒。さりとて、ここでぶざまな酔い崩れなど見せては後日の笑われぐさ。
と、杯も戒め、座容も保っていたものだった。
が、そのうちに、花夜叉、鷺夜叉、桐夜叉などの田楽輩が「……ごあいさつに」と罷り出て、道誉のごきげんも斜めならずと見えた頃からが、いけなかった。いや酒景のみだれや、彼らの道化軽口などは、なにも高氏の心理にかかわりはない。彼の密かな毅然がついに維持しきれなかったのは“ごあいさつ”の仲間に藤夜叉も交じって来ていたからだった。
「ア。……小殿、お気をつけて」
どこまでつづく奥曲輪か、長い長い深夜の廊を、蹌踉と曲がりくねって来たところで、彼は何かへどすんと肩でもぶつけたような気がした。
「ま。おあぶない」
彼をささえている影は、共に、よろとして、もてあますような抱えざまも懸命に。