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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

と、あやまり入って、どこかには、兼好の逆ネジをさえ恐れている風がみえる。

それどころか、兼好は一歩もはやく、こんな所の武者門は出てしまいたい。彼は断るように言った。

「では、帰ってもよろしいのですな」

「ご念にはおよびません」

「やれやれ」

心から、身を暢ばすと、

「あれに、お迎えの輿もみえておりますれば、輿の内へ」

と、部将が先に立って、揚屋路地から、横門のわきへ誘って行く。

みると、あじろ輿をすえたまわりに、派手やかな半武装の武者が三人、輿丁が四人、ひざまずいて待っていた。

「……これは?」

「さ、どうぞ」

「輿などいらん。吉田山の乞食法師、歩いて帰ります」

「でも、せっかくなお遣し」

「お迎えとは一体、誰の?」

「委細は行く先でおわかりになりましょう。じつはそのお方より主人長崎殿へ、なにか直々の御交渉があったので、かくは貴僧の身をお返しすることになったものだ。……ひと言、先のお方へは、貴僧からもお礼をのべねば相すむまい」

「なるほど。しかし、誰とも分らいでは」

「いや告げては興もない、対面までは告げるなと、迎えの者も口を封じられて参ったとか。……ともあれ、お乗りください」