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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

院ノ庄

「わしも行く。……備後と共に、わしも帝のおあとを追うて、せめては、お力づけの一ト言でも申しあげたい。おさらばじゃ、権ノ五郎は敵に包囲されぬうち、少しも早うこの船坂を去るがよい」

院ノ庄

播州今宿(姫路市の西郊)から美作路の杉坂越えまでには、途中、夢前川があり揖保川の上流があり、たとえ身がるな二日路としても、らくではない。

まして大勢の旅だ。

さらには、後醍醐帝のほか、典侍の女性三名もそれぞれ輿のうちである。

「いそげ、ここ数日は」

しかし、どういってみた所で、輿は牛の足より遅い。二日目でやっと千本ノ宿。そして翌日は、どうにか杉坂を越えたものの、三日月村ではもう輿丁の者も、輿のうちの御方も、まったく疲れはてていた。

その代りに、佐々木道誉が帝に奉侍するさまは、かゆい所へ手が届くほどだった。

ひとつには、侍者の行房と忠顕が、今宿からは、帝のおそばにいなかったせいもある。

三日月泊りの宵だった。

道誉は、宿所の仮の局屋まで罷り出て、とくに三位ノ典侍廉子に会った。

「いかにとはいえ、連日の山また山路。女性がたには、さぞ空恐ろしゅう思し召すならんと、お察しいたしておりまする」