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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

赤坂城

赤坂城

ここも変った。

もう正成が願っていたような平和な南河内の山里ではありえない。

さきに正成が笠置から郷里へ帰るやいな、楠木家の館から近い赤坂の一丘には、昼夜兼行で築城の土木がおこされていた。――いらい、昼夜のけじめもなく急がれた“城づくり”なのである。

地相の選びも、

「ここよりない」

と、一日できめ、縄取りや、壕塁の構想なども、自身、わらじ穿きでさしずを下し、

「短時日の仕上げこそ、このばあいの第一だぞ。おそくも二十日うちに築き上げよ」

と、日を切っての急工事なのだった。

またそれの奉行役には、村人に衆望のある松尾刑部と爺の恩智左近を振りあててある。

土木の工は、武略だけでもおよばず、権力だけでも捗らない。――が、正成の“御本屋触れ”がゆきわたると、領下の百姓から老幼までが、赤坂の丘へ来て、夜も日もなく、土をかつぎ、木を伐り、石をうごかした。

様式は、いわゆる、

“掻き上げ城”

というものだった。

丘のすそ三方面は二百尺から三百尺の断崖である。下にカラ壕を掘りめぐらす。そして土は内部へ掻き上げてゆく。つまり巨大な土壇にたたみあげて、その急斜面には、鹿垣をつらね、さらに胸壁やら板塀など二重三重のかまえを上にむすび、内にはまた大木や大石を山とつんで、