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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

女房車

もし六波羅勢がさえぎらば、討ち払うまでよ。――わかったか」

わかった! とする大衆の応えが、鬨の声をなして、全山をどっと身震いさせた。

女房車

「増鏡」の筆者は、この国家的事件のあった日には、まだ若年か幼少かであったかもわからない。

けれど宮廷、あるいは宮廷に身近な人ではあったようだ。その人は、当夜の変を、こう見聞のまま書いているのである。

――つつむとすれど、武家にも早う漏れ聞えて、さにこそあンなれと用意す。

まづ九重を、きびしくかため申すべしなど定めたり。かくいふは元弘元年八月二十四日なり。

雑務の日なれば、記録所におはしまして……。

六波羅両庁と、二条富小路の里内裏のあいだは、まさにこんな磨ぎすまされた空気だったにちがいあるまい。

天皇は、その二十四日も、日ねもす記録所(政務所)にお励みであったとある。――そして宵ごろ、おつかれの身を、しばし本殿に憩わせておいでになると、なにか、中門廊の方で、

だ、だ、だ、だ

と、あわただしい足音だった。

清涼、紫宸の皇居とちがって、ここは広いといっても、もと西園寺実氏の私邸であった町なかの館である。何につけお耳うるさい。