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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
雪どろんこ
どこかで密会をとげ、また再起の計などしめしあわせていたことは疑いもない。
ひるがえって。
その後の世上をみると、
「河内の正成は、砦の火の下に、自害して果てた」
と、一般に信じられていた。
また、凱歌のもとに、大軍を収めて、やがて六波羅へ帰った鎌倉諸大将の面々も、
「多聞兵衛以下、楠木一族、あらましは死にたえました」
と、公報していた。
雪どろんこ
「兼好さん、兼好さん」
「どこ行くの」
「から傘抱えてどこ行くの」
「酒瓶を提げてどこ行くの」
子供たちは彼の姿を囃した。どこまでも、からかいながら、くッついて来てはなれない。
およそこの界隈でなら、吉田山のすね法師を知らぬはなく、子供らまでも、この小父さんが麓へおりて来たと見れば、いつもこの通りなのである。
兼好は立ちどまって、
「だめ、だめ」
と、子供たちへかぶりを振った。
「今日は町へ買物に行くんだからね、またこんど、おもしろい話をしてやるよ。今日はだめ」
「なに買いに行くの」
「お米」
「うそだい」
「お酒もね」
「お酒なんか明日でもいいじゃないか」
「そうはゆかない。味噌もないし炭もない。この兼好さん、干乾しになっちゃう」