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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

鳴動

と、ここ数日の情勢をみて、うたた心細さに耐えなかったことでもあろう。

とはいえ、彼ら若公卿たちは、新しい宋学にもふれ、宋代の兵法書にも精通していた。この貧しい孤軍の士気を考えないわけはない。

なおまた。

楠木正成一族を、この不利な陣へ招き入れる策としても、御夢は、ただの“みことのり”にも増して、大きな感激を正成にあたえるものと思われる。

と、すれば、策を立てたのは誰だろう。後醍醐ご自身か、藤房か、聖尋か。――ともあれ、その朝のことは、全山の将士にもすぐひろまった。そして、

「ここの弥勒菩薩と、虚空蔵菩薩が、みかどの夢枕に立たれた」

と、称えあい、中腹の岩壁像のまえでは、山の律師、成就坊たちが、盛大な戦勝祈願を執りおこなった。そして式には、天皇以下も列せられて、その場から、万里小路藤房へ、

「すぐさま、河内へ行け」

との御命がくだった。

勅を拝すと、藤房はすぐ身装を変えて、陣中を立った。――九月初めである。わざと従者も多くは連れなかった。――さはいえ任は重い。正成のこたえも予断はゆるされていなかった。

鳴動

柿は赤い。

烏は黒い。

南河内の山里は、そう二つの物が、いとど秋を深めている。