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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
「そうだろう。いや一興一興。夜食は出さずにおけ。後ほどその兼好と一しょに喰べてやろう。大儀だった主膳」
主膳は始終おもてを上げず、またそうっと、片手でさかいの唐戸を閉めた。
やがてのこと。
それまで、ぽかんと独り一室におかれていた兼好は、家臣の早川主膳から、
「こちらへ」
と、みちびかれて、べつな客殿の方へ案内されていた。
あかりが灯く。館じゅうが朧に浮き出す。灯は雪まだらな庭園と映え合って、廊から廊のツリ燈籠まで小松の大臣の風流を真似たかのようである。
「いぶかしい?」
兼好には、ここのあるじが何者なのか、まだ判断がつかなかった。
公卿か、武将か。
いやいや、そのどっちにせよ、現下の洛中はまだ暗黒の府も同然なのだ。――笠置、赤坂は一おう終熄したものの、伊賀、伊勢、吉野、紀州、西国にまでひそむ正体知れぬ宮方のすべてまでが消えてしまったわけでもない。
それに、そなえて。
現に鎌倉の二万余騎も、畿内から洛中にふみとどまって、万一に待機しながら、ごった返しの軍政下にあるのである。
だから一般の物騒はいうまでもないし、流言蜚語もさかんで、たとえば昨今では、
「先帝(後醍醐)には、六波羅別院の獄屋で、もう暗殺されている」