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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
と、思い募ッて来たのかもしれない。
「おゆるしを。もうはや、一献も飲けませぬ」
正直、兼好もいちどに酔をおぼえて来たので、こう、かぶとをぬいで暇をつげると、
「なんの、帰ろうとて帰そうか。それ女、手をとって寝室へ運んでやれ。……なに、無用じゃと。ならば、もすこし落着いて飲め」
と、道誉は離さない。眼をすえて、あらたまる。
「法師」
「もう、この辺でお放しを」
「ム。……いや口を割ってまで、飲ませようとはいわんよ。代りに、道誉の説法をすこし聞けい」
「ほ。それは聞き物」
「このくそ坊主。なんじは元来、何者だ。――法師めかしながら世の法師でもなし」
「おそれいります」
「ひたぶるな世捨て人といいながら、じつは人間好きで、弥次性もたっぷりで、世間を、ひょこひょこ見歩いては、独りでおもしろがっておる」
「やはり地獄行きの方ですな」
「むろん無間地獄だわ。空々しゅう酒の害など説くくせに、酒ほどよい物はないともいう」
「その通りなのでして」
「恋を讃美するかと思えば、女という女は、口を極めて悪くいう。猥らなら猥らを誹り、さればとて、世帯持ちよく、貞女めかしたなども、女としてつまらぬもの。