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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

……とは誰です、何者ですか」

「亡き良人が、事の前から、密と親しゅうしておられました佐々木道誉どのでございまする」

「なにっ、道誉が」

愕として……。

「あの道誉が、あなたをか?」

半信半疑、高氏は茫とする。

小右京は、その怯えから抜けたい一心で打ち明けた。去年の初冬ごろ。仁和寺の隠れ家へ道誉が訪ねてくれたが、それ以後、恐ろしい彼の執念につきまとわれていることを、告げて、

「どうぞ、お助け給わりませ。すこしはある身寄りの者も、新しい朝や六波羅をはばかって、寄せつけてはくれませぬ。……というて、道誉の館へ引っ立てられて行くほどなら、死んだがましでございまする。高氏さま……」

と、あとは涙に沈んだ。

“罪の半分は女にもある”

それは道誉が兼好へ言ったことばだが、高氏のばあいは違う。高氏のは、ただ当惑だった。

いわばふところへ逃げこんで来たこの窮鳥。しかも、美しい窮鳥である。――高氏は迷った。

断ッたらどうなろうか。

おそらく小右京は死を選ぶかもしれない。いやきっと死ぬ気だろう。その顔は死相と紙一ト重の白さだ。生き物の必死がしめす或る凄気さえおびている。

……が。