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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
しょせん牛車などは曳かれません。風雨の日もありましょう。われら供奉の者もできるかぎり軽装をよしとします。なにとぞ、ここからは早や隠岐の配所ぞと、ご観念あそばして、輿におゆだねくださいますよう」
「…………」
これでも、ご得心が見えないので、道誉はやや凄んで言った。いわば柔軟な強迫だった。
「とかく鎌倉からわれらへの厳達は、こんな手ぬるいものではございませぬ。馬の背に押しまいらせても、期日までに、彼方へ着けとの厳命なのです。……が、いかでこの道誉が、さような非情におよび得ましょうや。ここはまだ六波羅も間近、先ではお宥りもできましょう。なにとぞ、おくみとり願わしゅう存じまする」
すると。――帝は、頷かれた。すぐお立ち出でになったのである。
何しても、幕府の武家意志なるものでは、後醍醐にたいして、みじんな仮借も同情もしていなかったのは明らかだ。
しかし、新しい光厳帝にせよ、後伏見、花園の二院にせよ、血でいえば、支流も本流もない同じ皇室の後醍醐である。まして昨日の天皇を、今日軽侮するのは、とりもなおさず自身、皇室を辱めることでもあるから、余りな幕府処置には、ずいぶん、はらはらされたにちがいない。