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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

そこで、

せめて都門を離れるまでは。

と、六波羅から鳥羽までの道筋だけでも、衆目に酷たらしくないように、行装やその他に、新朝廷の配慮があったろうことは想像に難くない。

従って、鳥羽から先では、乗物から扱いまで、劃然と、待遇がちがっていた。

「花園院御記」には、

御割子(中食)ノ後、鳥羽桟敷ヲ数刻ニテ出御、今度ハ四方輿ナリ。三方ノ簾ヲ捲カセラレ、女房三人ハ張輿、武士数百騎、路頭、前後ヲ囲ム。

とあり、これで見ると、わざと先帝の姿を、行く行く人目に曝し歩いている風であり、侍者の一条行房、千種忠顕の二人は、輿とも馬ともしてないから、歩かせられたのかもしれない。でなければ、徒歩と馬の背、半々というような態だったろうか。

いずれにしても、あさましい世の常の流人送りと、たいした相違もなかったようだ。違いといえばただ、警固の軍兵が多かったことである。

――先帝は今日、津の国、昆陽の宿に着かせ給ひて、夕月夜ほのかにをかしきを、ながめおはします。

命あれば

こやの軒ばの月も見つ

又いかならむ

行く末の空

昆陽を出でさせ給ひて、武庫川、神崎、難波など過ぎさせ給ふとて、御心のうちに思す筋あるべし。