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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

「でもまだ、手を焼かせて、おさまらぬのか」

「されば。将監にも子はあろう、親なれば、子の心がわからぬはずはないと、果ては、お声をあげて泣き狂うさま。どうにもはや、われら警固の者も、見て見ぬ振りは仕切れませいで……」

宮は、すでにこの夕方から、大将の長井将監にたいしても、嘆願しておられたのである。

父のみかどは、すぐ先の加古川ノ宿にお泊りとか。

囹圄の父と、囹圄の子だ。

この生別は、永遠な、別れとなるかもしれないのだ。

もし今の機会を逸せば、じぶんの船は讃岐の彼方へ、みかどの旅は中国路の奥へ入ってしまうのである。お目にかかれる万に一つの機会は全く今しかない。夜明けるまでだ、一期の今夜だ。

「あわれ。頼む……」

と、宮は切々と警固の士へ訴えて、夜食の箸もお取りにならぬ有様だとある。

だから将監も、じつは逃げていたのである。だが、それは部下も同様だった。再三、持て余しては訴えて来る。で、ついに彼は不承不承、宮のいる念仏道場の床の一ト間へ伺ってみた。

「……?」

見ると、宮はそこにはおいでなくて、道場の隅のいぶせき茶汲み部屋の窓へ向って、独り寂然と坐っておられた。