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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

空はすっかり明け放れ、雲雀がしきりだった。かくて、陣を作した舟列は、まもなく海上へ出て行った。

そのあと。

なんのわけも知るではなく、ただ物珍しげに見物していた里の男女もみな散らかってしまい、兼好と命松丸だけが、いつまでも雲雀のサエズリの下に腰をおろして、ぽかんとしていた。

「お師匠さん」

「……ウむ」

「もう行きましょうか」

「うん」

「もう船は見えませんよ」

「……ウむ」

「腰が抜けてしまったんですか。お腰が」

「ああ、半分抜けたよ」

「どうして、あんなお優しい親王さまが、流されて行ったんでしょうね。どこが悪人なんですか」

「わからないよ、世のことは」

「変だなあ。……じゃアなぜ、雀の子なんか差し上げたんです?」

「そっくり、お前と同じようなお方だからさ」

「わたしなんか、寝小便小僧だ。似てなんかいるものか」

「いや、あの宮は、皇子にこそはお生れだッたが、そして、やごとなき父ぎみや、立派なご兄弟も沢山におありなのだが、じつはおまえと同様な孤独なのだ。愛に飢えていらっしゃる。お前の方が、今はよッぽど倖せだろ」

兼好はやっと腰を上げた。

「どれ、今日は加古川ノ宿へ行かねばならぬ。