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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
――下手には進めぬ」
と、結論をつけた。ざんねんだが、留守の城を突かれては一トたまりもない。「引っ返そう」と、いうのである。
だが、五郎権ノ頭は、あきらめきれない。
大覚ノ宮の心事もまた同様なのは、問うまでもなかった。一とき、父子の間で激烈な論争が交わされた。あくまで事を決行しようという血気な子と、思慮を感情にうごかされない老父との衝突では、子が言い負かされるにきまっていた。
「いや、ここは高徳に、おまかせくださるまいか」
高徳が、それを救った。
「お引揚げの儀は、それがしからもおすすめする。したが、そのうちの、すぐれた兵百五十人ほどを、特に権殿へおさずけ下さい。自分にも屈強な兵六、七十騎は来合うはずゆえ、それをあわせて、船坂峠に輦輿を待ち、きっと帝をわれらの手にお迎えしてみせまする」
だが重明は、それにも、うんとは頷かない。
道誉以下、輦輿をまもる一千の兵は、鎌倉方でも精兵中の精兵と聞いている。玉砕も時にこそよれと、あやぶむのだった。
「もとより無謀に近いでしょうが、といって、全く絶望するにもあたりません。策はあります。充分、味方の利もあります」
なんの鋭さもない抗弁だが、高徳の吶々という言には、五郎と違う粘りがあった。