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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

こちらが行き着くまでには、杉坂、三日月村もこえて佐用ノ宿から因幡へ出るか、津山を経て院ノ庄へといそぐか、二途いずれにせよ、猶予しているはずはない」

「いや、相手は輦輿や女房輿をつれていること。急いでも捗る道のりは知れている。追ッかけ追っかけ、山の極みへまで追いつめてゆけば」

「ああ、権殿はお若いな」

「そういわるる備後どのはまた、分別すぎる。分別はまま大事を取り逃がす」

「が、脚下をごらんなさい」

高徳は、峠の下に望まれる播磨灘の一端を指した。

「昨夜らい、加里屋(赤穂)ノ浦の辺には、幾十ともしれぬ兵船が入っている。思うに飽浦の佐々木党が、あれより兵を揚げて、ここの退路を断とうとしているもの。……また、一方には千葉、小山の敵をもひかえ、何で権殿のいわれるような独り勝手が出来ましょうぞ」

果たして、高徳の言ったとおりな事実が、麓の三石からも聞えて来た。――のみならずその時、大安寺の富山城からも、松田重明の早馬があった。早馬の者の言によれば、備前佐々木党の全面的なうごきが見え、事態は危急に迫っている。すぐ引っ返して、富山城の危急をまず扶けよ、というのであった。