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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

天皇となりすまして、偽装の御座に耐えていた花山院ノ師賢も、いまは御簾内にも居たたまれず、ほかの廷臣らと共にうろうろして、

「あの騒々しさは、だまされたと怒る山法師らの声であろ。どうしたものか」

「なだめても、詫びても、いッかな耳に入れようとはせぬ」

「こんな態では、両親王のお身さえも危ぶまるる。われらの身とて、しょせん、こうしては居られまいぞ」

と、身も空もない。

垣の外には、たくさんな篝り火が、バチバチと赤い火をハゼている。つい昼まで、ここの錦旗を守って近衛していた僧兵らも、どこへ行ったか影もなかった。

おそらく、その彼らまでが、離反の仲間に加わり、ここの行在所へ向って、遠くから鬱憤を言い哮ッているものにちがいない。まるで、野獣の吠えるあらしだ。これこそ四面楚歌というものだろう。

「……なにを泣かれる」

大塔ノ宮は、そんな中で、弟宮の宗良を、叱っていた。

両宮の前に、かたちばかりな陣中のお膳がみえる。それも、釈迦堂の縁である。仲よくお兄弟して、箸をとっておられたかと思ううちのことだった。俄に……み手の箸をも投げそうな語気を高められていたのである。

「女々しいぞ、弟宮。