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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

元々、たのめる武士はいくらもおらぬ。それが、真の味方とまで固まるには、時が要る」

この日あたり、六波羅軍が、すでに京を発し、難波へいそいだとの飛報が、しきりに、天王寺界隈を騒がせていた。

天王寺を中心とする荒陵の聚落には、こまかい庶民の屋根が、低地低地に密集している。そしてここにも散所民の生態がそっくりあった。しかし施薬院、療病院、悲田院など、彼らのための施設は、荒れはてていた。

もともと、聖徳太子の草創になる四天王寺は、ただの殿堂仏教の道楽ではない。この低地帯にむらがり住む貧者のために考えられた社会救済を、輪奐の美に権化したものだった。

中央の敬田院を寺の本部とし、施薬院では薬をめぐみ、療病院へは、業病の男女や行き仆れを収容した。また、悲田院では職のないものに職を与えなどして、いわば仏陀をめぐる和楽の仏都を理想したもの。

けれど、その機能も、源平の世頃にはすでに見られず、わけて鎌倉治世も紊れきッたこの頃のような乱世になっては、全くあとかたもなくなっていた。残っているのは、いたずらに美しい四門や堂塔だけである。いくらいい物を持っていても、その持ち方を知らない人間をあざ笑うように、森にはよくいう天王寺鴉が何万となく棲息していて、朝夕わいわい暮らしている散所民の屋根と、その原始的な生態を競ッているような騒々し