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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
「おうっ、こころえた」
螺手に貝を吹かせ、いちおう陣立てをまとめ直していた時だった。
どうしたのか、先に住吉へ突進していた高橋の騎馬隊が、味方の歩兵のうちへ、逆なだれに、戻って来た。松林の両側から、とつぜん、矢の集中を浴びたものか、小混乱をまず起した。
が、じっさいには、菊水の旗が見えた所に敵はいなかったのである。正成の弟正季、一族の神宮寺正師、佐備正安らの河内きッての精鋭は、
「今ぞ」
という正季の一令をべつな所で受けていた。
住吉ノ浦へつづく小松大松の密生している乱松地帯は、道があって道がなく、一種の迷路といっていい。
「やっ、敵は後ろだ」
「いや横だ」
高橋隊の逆行を見て、隅田の一勢も、突くところに戸まどった。そのうえ阿倍野の一端からは、約二百ほどの騎馬の楠木勢が、疾風のようにむかって来た。
それは、日傭兵だの、浪民などといえるものではない。見事な訓練と規律をそなえた一団の鉄騎で、楠木方の和田正遠、正高、矢尾常正、箕浦友房などが、先頭の将だった。
と同時に、正成の本隊も、天王寺附近から、鼓を鳴らして起っていた。――そう気づいたときは、一つの兵法の図式が、いつのまにか、忽然と地にえがき出されていたのである。