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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
「何を仰せられる。死ぬには及びますまいが」
「でも、鎌倉へ曳かれては」
「おあきらめは、早すぎる。それらの裁断は、一に高時公のお胸にあること」
「その北条高時が、たれにもまして、この源中納言を、憎んでおると聞きおよぶ」
「いや」
と、道誉はなぐさめた。
自分も、嫌疑をうけて、その申し開きに下る身であるが、充分に自信はある。ご助命の方も、きっとおすがりしてみよう、と高時の寵を恃んで、言いきった。
「ありがたい」
具行は、はじめて涙をたれた。
「もし、助かったら、他日、恩賞の日、其許を武将の叙位の第一に推挙しよう。ああなにやら、濶然と、闇がひらけて来たような。……道誉、忘れ難い一夜だな」
いつか、鶏鳴が遠くに聞えていた。ふたりは、ほんのつかのま眠っただけだった。
道誉を先頭に、具行の輿をかこんだ人馬は、その朝、愛知川を越えた。
愛知川は江南江北の分堺である。そこから先の――犬上、坂田二郡の沃土から美濃境の山岳地方までも――佐々木の領土、つまり道誉のお国元なのだ。
道行く者も、
「あ。ご領主が」
と、路傍にうずくまり、駅路にかかれば軒々で、
「ご領主が通らっしゃる」
「ご領主のお帰りか」