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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
だが人間はついに、われからその棲み家を業の窯として、自分も他人も、煮え立つ釜中の豆としてしまった。――天下騒然、
「戦だ」
「いよいよ始まったぞ」
「さ、宮方へゆくか。幕府方に付いたがいいか」
もう眼も見えない有様である。身の去就さえ、こうなってからの、うろたえだった。
ここ笠置の城は、どっちを向いても山ばかりな一孤峰だが、世間の騒ぎや沸き返ッている人心は手にとるように聞えてくる。――それは、どれ一つ、まとまッた人数や兵力でもないが、山城、河内、伊賀、伊勢などの地方からも、
「笠置へ、笠置へ」
と、錦旗をのぞんで、ここへ馳せ参じるやからが連日絶えず、それらの郷武者どもの口から世情さまざまな声が、自然入ってくるからだった。
とはいえ、参陣の衆も、これと名のある武士は一人とてない。
いわゆる烏合の衆なるものだ。――これを、みそなわしては、後醍醐のおむねも、公卿ばらの心のうちにも、ひそかに、安からぬものがあったのは、いうまでもない。
「具行」
と、いまも後醍醐は、笠置山上のせまい行宮の御座から、侍座の源中納言具行へ、
「すでに、秋の初めには、そこの手から、檄は国々の武門へ、くまなく飛ばしてあったろうにな」