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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
ただわたくしは、こうなる以上、ご無事のうちに、ひと目でも、お別れをしてゆきたいと存じまして」
「無残だのう。せっかく、望みを持って、そち夫婦だけは、まあ無事に世をすごすことかと思うていたに。……して、元成の養家服部どのは、宮方か、鎌倉方か」
「そこは、何もわかりませぬ」
「わからぬはずよ」
あわれむように言ったとき、足音烈しく、庭門から駈けこんで来た者があった。待たれていた、爺の左近と刑部だった。
「もどったか、爺っ」
「はっ」
「刑部どのにも、ご苦労でおざった」
「さぞ、お待ちかねならんと、気はせきましたが」
「して、弟の正季は」
「ご明察にたがわず、日ごろ、よく寄り合う加賀田の山荘に」
「おりましたか……」
「正季とその郎党だけでなく、天見ノ五郎、中院ノ雑掌俊秀、高向甲斐、隅屋新左。まだまだ、かぞえきれぬ者どもが」
「同勢どれほど」
「三百には足りますまいが、なおまだ、紀伊、和泉などから駈け合う同志を待って、こよいは時親どのの山荘に明かし、あすあたり、旗鼓堂々、一路笠置へのお味方に馳せ向う所存――と、いやもう、たいへんな」
「そして」
二人の復命につりこまれて、正成もつねにない急き込みかたと唇の渇きをみせた。