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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

「正成の旨は、弟正季へ、しかとお伝え下されたか」

「もとよりです。懸命にお諭しつかまつッた。けれど、耳にもかけるふうではない。……兄者には、ここ数日、泣かんばかり出陣の儀を、おすがりもし、言い争いもして、しかも肯かれなかった上のことだ、と」

「…………」

「じゃによって、決して、無断の出陣などではない。兄者とて、ご合点のこと。――それを今さら、追ッかけ使いを飛ばして来て、途中より引っ返せなどとは、兄者もすこしどうかしておられる、と逆ねじを報うて来るような始末でおざった」

「ちっ……」

正成は、舌打ちした。どこかを抉られるように、おもては、血をひいていた。

「さても、しょむない弟め。……どうしても引っ返さぬとあらば、義絶もすると、そこまでをお聞かせあったか」

「義絶もぜひない――と、一言の下にいわれるのです。古来、兄と弟、叔父甥なども、戦となっては、思いを違え、別れがたい骨肉も、別れるためしはままある慣いと」

「さまでな形相とは」

「正季一人のみか、辺りの面々までが申す。もう正成どのが、われらの笠置参向を阻めるなら、一戦も辞すまいなどと、声も猛々、言いののしる有様だ。