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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

「鎌倉の?」

「はい。明石出雲、黒沼彦四郎、そうふたりが、幕府の使者として、新田ノ庄へくだるものと、道ではいわれておりますそうな」

「ふーむ。なんの前ぶれなしにだな?」

「怪しまれまする。しかもこのさいのことではあり……」

「待っておれ。一おう、殿のお耳へ入れてくる」

義助は、いちど奥へもどったが、またまもなく姿をみせた。そして新兵衛を近くにまねき、廊の上と下とで、なにかを、ひそかに耳打ちしていた。

新兵衛は、主命をのみこむと、ひざまずいて、

「こころえました。では、そのように」

と、すぐどこかへ走り去った。

世良田のみなみへ半里、利根川べりに行きあたる。

そこの川岸の里は地名を徳川といい、新田家の一支族、徳川教氏の住地だった。――この世良田徳川の子孫が、遠いのちに、江戸幕府の徳川将軍家となったのである。だから代々の徳川家は、祖先新田氏をおろそかにしなかった。

さて余談はおき、いま、利根を渡って来た徴税使の一行は、河原の辺で、しばらく憩うていたが、

「まず近くの徳川家へ、沙汰の使いをやってみようか」

と、宰領の明石出雲介と黒沼彦四郎とが、やおら、腰をあげはじめる。