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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

初雪見参

「や。お声は彼方だ」

と、気づいたらしく、矢田彦七、平賀三郎、木寺相模、岡本三河坊などの随身は、馬をとばして追ッついてきた。

大塔ノ宮は、狩猟の藺笠、豹の皮のはばき、弓を手に。

「口ほどもないな。たれひとりおれのさきを駈けてみせるやつもないではないか」

「じたい無茶でおざりますわ」

彦七が、すぐ言った。

「あの野川を騎馬で跳び越えられたとは、思われもいたしません。それで川下の土橋を廻り、ついお姿を見失うたので」

「それが不覚だ。戦場ならば、今日の供など役に立っておらん。そうだろう」

「おそれいります」

「鷹を持った徒士どもは」

「とうに見えもいたしませぬ」

「とにかく急ごう」

「いやもう森の彼方の北野の町なか、この同勢で余りに馬をとばしては、何事ならんと、人目をひきましょう」

「ひいてもかまわん。もし殿ノ法印のしらせが、まこと大事の兆しなら、一刻もゆるがせならぬぞ。つづいて来い」

前ほどな鞭ではないが、宮はまた快足をみせて洛内へいそいだ。陽はまだ午である。何が起って、今日の野駈けを途中から引返したのか。

いつものごとく、清滝から衣笠へかけて鷹をこころみに出たのであった。