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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
勝者の門
事情は、こうであった。
登子と侍女たちの四、五人は、あの鎌倉陥落の前夜、紀ノ小市丸の知らせで、北条守時の戦死を知り、谷の隠れ穴から山づたいに六浦の方へさまよい出て、武州金沢の称名寺へかくれていた。――だが、そこもまた両軍の交戦場となりはじめたので、称名寺の寺侍に付き添われ、船へ移って、海路、三河の一色村へ落ちのびて行ったのだった。
三河足利党の留守居は、すぐこれを、高氏の方へ飛脚し、登子もまた、どうすべきか、身の処置を、良人のいいつけに待っていた。
高氏は、どう考えたか。
もちろん、彼も妻の無事は大いによろこんだところだろうが、さりとて、すぐ都へのぼれとは告げてやらなかった。元の鎌倉へ帰れと命じ、そして幼い身で鎌倉にいる子(千寿王)のために、母としてそばに居てやるがよい――との返辞を送っていた。
またここへの書状には、それの知らせと共に、「都のことは、一切心配におよばぬ、ひたすら千寿王の守護と、士卒の統御に心せよ」という意味のことが、高氏の命として、つけ加えられていた。
勝者の門
雨もほどよく、土用の照り込みも充分だったせいだろう、近年になく、ことしは稲の伸びがいい。