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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
それとまた。
義貞の別館(しもやしき)のある反町にも近く、脇屋義助の脇屋ノ里や、そのほか江田、綿打、田中、額田などの同族たちが一瞬にあつまるにも生品明神がもっとも地の利であったなどの点も考えられる。
ともあれ、それは五月八日もまだまっ暗な寅ノ上刻(午前三時)ごろ。
黒い魚紋のように、社頭に群れて、はやくから逸る駒を泳がせていた武者ばらの影は、やがて、
「しいーっ」
と、制し声を交わしながらわらわらと駒をおりた。世良田から義貞、義助たちの一勢が着いたのである。その声なき影の群れを割って、義貞の影は黙々と社殿の前へすすんで行く。そしてすぐ、かねて賜わっていた綸旨と、願文を読みあげた。
とくに綸旨は、彼の挙兵の動機を正当づけ、また将士をして、それに死なしめる思いを与えるのでなければならない。
頃年 北条高時入道
朝憲ヲ軽ンジ
逆威ヲ恣ニ振ヒ
積悪 已ニ天誅ニ値ス
ココニ至リ 累年ノ宸襟ヲ休ンゼンガ為
将ニ一挙ノ義兵ヲ起サントス
叡感 尤モ深シ
抽賞何ゾ浅カラン
宜シク 早クニ
関東征伐ノ策ヲ運シ
静謐ノ功ヲイタセ
これを読みあげているうちに、義貞はいまや自分は神に選ばれた武の権化みたいな心境にみちびかれていた。