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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
するとその夜早や、足立、豊島、葛飾などの近郡から、
「鎌倉攻めのお催しとか。年来、今日を待っていた輩でおざる」
と、言って来たり、
「足利殿の稚子大将も御在陣と聞き、合力に参じ申した」
などと味方に馳せ加わって来る武士が、ぞくぞく、絶えないほどだった。
彼らはまた、新たな情報を、それぞれにもたらして来た。――義貞が綜合してみるに――敵は目に見えないが、もうまぢかにありと思わずにいられない。
草枕、また、短か夜だ。
まどろむまもなく、
「昨夜のうちに、鎌倉軍一万以上の大兵が、多摩川を押し渡り、府中、立川をこえて北上中との聞えです」
と、夜明けの一報が、物見隊から響いてきた。
「まず腹拵えだ」
義貞は騒がなかった。
「早飯も戦のうち――」と。
この日、十二日、初めて両軍は久米川(所沢附近の南方)をはさんで矢合せの序戦を切った。
幕府が、変を知ったのは、どんなに早くても、九日の夜であったろう。即時、桜田治部大輔を大将に、兵五万騎を派すと号された。しかしそんな余力は鎌倉にない。時間的にもまにあわない。一万余でもたいへんである。ただその速さには、いかに幕府が仰天して、これへ全力を傾けて来たかがわかる。