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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

「うれしいぞ。おまえらまでが。そう思うてくれる高時は日本一の倖せ者。さらば、もひとつ舞おう。その間は、敵も寄るまい」

一瞬……。

新田勢は立ち恟み、

「や? あれは?」

耳をすまして怪しみ合った。

執権以下が立てこもった北条勢の最後のとりでとそこを見て、その遠巻きをきわめて慎重に押しちぢめていた山門の内から、突如、大勢の謡声が、しかも銅拍子や鼓の音まで交えて聞え出したのである。

「はてなあ?」

「計略か」

「そうだ、敵は何か策をかまえているのかもしれぬ」

「しばらく、様子を見ろ。放ッておいても、早や東勝寺の内も火だ。敵は、蒸し殺しになるだけのもの」

たしかに、東勝寺五大堂の上にそびえている五重ノ塔の三層目あたりにも、ピラと、真っ赤な火焔がひらめいている。

そのほか、木々にすら火の火花がチラめき、伽藍の甍、谷の奥まで、暗さと煙に蒸されながら、その底にはまだ、たくさんな生命のうめきと、異様な人影の息吹きが窺われるだけのものだった。

「息つぎに、ひとつ、飲もう。……新右衛門、杯を」

高時は、薙刀を肩に立てて、美味そうにそれを飲みほし、また謡った、また舞った。それが彼の最大な憤りを世へむかってする反抗かのようだった。