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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

「こころえておきます」

「特に、部下の喧嘩に気をつけい。新田殿と張り合ったりせぬように」

「いやもう、喧嘩沙汰は、焼け残りの辻々で、毎日のようだと聞いておりまする」

「それはいかんな。軍令を出しておけ。厳罰に附すと」

「令ぐらいでは止みますまい。なにせい、戦に勝った驕兵です。酒をさがし出す、財物を掠める、女を攫う。わけて、女漁りはひどいそうで」

「ここの兵もか」

「その欲望一途な餓鬼のざまは、わが足利の兵も新田の部下も、ひとつもので、行儀に変りはございませぬ」

「困ったものだな」

「それが楽しみで命がけの戦争に身を賭けたのだと、放言する輩さえあるほどです。山野へ避難した女も、深窓の諸家の女も、彼らの目には、捕るにまかせた好餌と狙われているらしく、聞くにたえない猥らも、昨今、めずらしくはありませぬ」

ふと。和氏は顔をくもらせた。

「……まだ今日も、お行方が聞えて来ぬな」

「御台所(登子)の御安否でございますか」

「そうだ。新田殿の手でも、合戦直後、八方捜してくれたとは申しているが」

「新田の言など、あてにはなりませぬ。ただ紀ノ五左衛門も鎌倉じゅうの山々から谷の穴まで、毎日、尋ね歩いておりますゆえ、やがては何か手懸りも……」