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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

……あの吐雲斎とも申す老いぼれでございますが」

それは両探題とも、あたまから忘れていた人間だが、

吐雲斎、毛利時親

と聞けば思い出される。

あれは四月の初めごろか。検断所の兵が、

「洛中を窺いに出て来た正成の師にして千早の軍師吐雲斎なる者を、引っ捕えてまいりました」

と近くの羅刹谷から、しょっ引いて来たものだった。

調べてみると、その怪異な老人はすこぶる能弁で、探題の前でもたかく持してくだらず、正成の幼時に兵学を教授したことはあるが、千早の籠城などには一切関知してないといい、その理由として、自分は元々、北条一族の者である、鎌倉へ問い合せみよ、と大言を払って怯まなかった。

すでに洛中は“赤松焼き”に会って、諸所に焦土をただらし、六波羅中も戦争以外何をかえりみているいとまない中だったので、

「ひとまず、樗門の内へ入れておけ」

と、監禁を命じ、吐雲斎のことは、さっそく鎌倉表へ問い合せを発したものの、そんな一風来人の身元調査に、今どき、手間暇かけて返牒してくるはずもない。つまりは相互で忘れ放しになっていたのである。

「鬼六。その老いぼれが、会いたいと吠えるのか」