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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
かつてのような濡れ濡れしい若後家の尼とはおのずから落ちつきも違っていた。義貞と話していても、過ぎた日の責めなどは、ほほ笑みの翳にもみせていなかった。
そこで。
義貞もやや眉をあかるくして。
――尼と覚一との、以後の流転なども聞き終り、努めて、むかしの古傷には触れずにいた。
「――では覚一も成人して、今はひとかどの琵琶法師とおなりだろうな」
「いえいえ、体ばかりは大きくなりましたが、まだほんに子どもで困りまする。……いずれあとからこれへ、ごあいさつに伺うはずでございますが」
「時に。あるじの高氏どのは、どう、おしやったの?」
「じつは、たそがれ、俄に九条殿からお召があって、やむなく、お出ましでございまする」
「え。外出か」
「新田殿へはお悪いが、公用火急のお召ゆえ、ぜひもない。昔なじみの尼前がごあいさつに出て、ようお詫び申しておけ。かならず早くに帰って来る。――と、かように私へ仰ッしゃって」
「ふうむ……。九条ノ民部卿光経どのの所へな?」
義貞は、独り喞に呟いた。
九条殿こそはいま、全武門の武士の焦点となっている上卿だった。
そのわけは、こうである。
初め、朝廷の軍功調査の局は、洞院ノ実世が主宰していたが、諸国の武士どもは、われもわれもと上表して、自分の功を言いつのり、かえって、ほんとに勲功のある者は、つつしんで身を矜持