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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

そんなことから、がぜん、東西両京の市を中心に、楮幣人気が沸いてきたものだった。

従来、貨幣の流用は一部で、多くは物と物の交易であったから、公家、武家を問わず、払い下げや交易は、ふつうのことで、かくべつな奇でもなかった。――だが、楮幣にかぎるという倉出しは、初めてである。――その先例を佐々木家がまずひらいたわけだ。すると、つづいて公家の廩倉でも、おなじ条件の倉出しがおこなわれた。それは一ト月もたたないうちといってよい。楮幣はどこでもよろこばれるものとなり、銭の値打をも凌ぎかねない盛行をしめしだした。

もちろん、こうした信用度は、それだけで興ったものではない。この間には、新政府の一大経済策もその裏付けとして大きくかかげられていた。なにかといえば、それは諸国の武家地頭への“非常税”ともいえるもので、

諸国ノ庄田ニタイシ

歳入ノ二十分ノ一ヲ

新ニ徴ス

と勅令されていたのである。

もっとも、ひろい武士層の動揺を察して、旧領安堵、新恩の所領、動かすべからず、などと既得権への保障も同時にうたっていたが、どう言いまわしても、思いきった重税の断であるに変りはなかった。

これで国費の財源も見通しが立ち、急場しのぎの紙幣も円滑におこなわれ、ひいては大内裏造営の記念事業も緒につくことができようか。