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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
それなのに正成はその部下をして送らす、という。
あくまで正成らしい好意だ。彼の誠意にちがいない。また、部下を使って人を闇打ちさせるがごとき卑劣漢でない自己を証し立てたい意味もあろう。――断わるのは狭量に似る。尊氏は正成からじぶんの幅や奥行きを測られてはならぬと思った。
「では、おことばにあまえて」
と、まもなく彼は、正成が衛府の内からさし招いた十騎の武者のうちに身をまかせた。そして正成と衛府の前で別れた。
十騎の武者は、どれも屈強なつらだましいの者どもだった。いずれも河内者だろうか。二騎はたいまつを翳してやや先に立ち、尊氏を中にかこみ、深夜の町を戛々と行く。
「…………」
始終、黙ったままだった。
それでも尊氏は六波羅までのあいだに、この者たちの態度や騎馬法などを見て、なるほどこれくらいな者が千もいれば、赤坂、千早の戦いもできえたろうと思われた。兵をみればその主将の人柄はたいがいわかる。尊氏は広い世界を恐れずにいられなかった。それにつけ、正成の存在は、前より大きな障害と考えられた。大望の一路をさまたげる難山となるかもしれない。今夜の口吻とあの信念、焼き刃がねのような純鉄な人柄。