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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
「では、噂は根無し草ではないというの?」
「人は知らず、この私が、何でそんな軽はずみなものを持って、あねぎみのお心をわざわざ騒がせにまいりましょうか」
公知は言いきッた。ほんとの心情にはちがいあるまい。廉子にもそう思われた。
もともと公知は、廉子の父の公廉の家で育てられた者であった。また何の能もないのに、廉子の引立てひとつで出世してきたものといってよい。だからいまだに幼少のまま「あねぎみ」と彼女をよんで、多少、この女流権力家にあまえる気味もあり、何かと、よく局御所へ姿をみせる一人であった。
それだけに、廉子も公知の言には、だいぶ心をうごかされたらしい。――だんだん問いただしてゆくうちに、いつか理知のつよい彼女もただの女の猜疑だけになっていた。それを根ホリ葉ほりする執拗さは、むしろ公知以上な動揺をうちにもってきたふうであった。
「……まこと、いまの話のようならば」
と、彼女はもう抑えきれぬ血のいろを、皮膚の下に騒がせて。
「なんとか、ここで……。思案せねばなるまいのう」
「あねぎみが、ここでご思案などとは、おそいくらいですよ。万里小路どのですら、心痛の余り、主上へご諫言したといわれているのに」