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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
――と、もう濁流にせかれる花と泡沫の明滅みたいに、白い素足やら夜風のなかの被衣、また、みだれにまかす黒髪などが、むかし薔薇園とよばれた六波羅北苑の木戸から東山のほうへ落ちて行き、それには一部の公卿と大勢の舎人なども付いて行った。
「……あわれ。女たちさえここを去らせば」
光厳帝は、いっそもう、おちつかれたようであった。御父の法皇がおられる方へと、やや濶達に廊を渡っておいでだった。
帝が近づいてゆかれると、そこではまぎれない御父の後伏見法皇のお声が、
「今となって……」
と、簾下にひれ伏している一武臣を、あららかに、満身のおいきどおりで叱ッていた。
「そちはなんと言った! かならずここは保ちささえますゆえ、ただ金剛山の寄手へたいし、勅をくだし賜われと、それを請うてまいったのも、つい昨朝のことではないか。――なぜそんな強がりの擬態をかまえて、俄に、鳥の立つような退去をみかどにせまるのじゃ。やくたいもない大将かな。仲時! それでそちの奉公が相立つのか」
「……はっ。ただもう」
ことばもなく、ひしがれたような姿の人は、探題の越後守北条仲時だった。
「おわびのほかはございませぬ。