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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

いや、雑賀隼人、加賀の前司信宗、土佐守兼光らなど、指を折ればまだまだ多い。味方は万をかぞえてもよかろう」

「御意」

と、うけて、忠顕はほかの顔を見まわしてから。

「さきには、宮将軍令旨も発してありますれば、いざと御旗を見れば、万や二万はすぐ近国からも馳せ集まりましょう。……したがここには、河内守が見えませぬが」

「正成か」

「は、決断所では役にもたたぬ仁でおざるが、畿内の兵を狩りだすには、あれもなくてはならぬ一人ですが」

「その正成は勘当した」

「え、なんで御勘気にふれましたか」

「つい十日ほど前よ、おれの前で、くどくど、説法めいた諫言だてをしてやまぬゆえ、出仕止めを命じたのだ。まもなく、河内の奥へ悄々として帰ったそうな」

こともなげに、宮は笑う。宮と正成とは、よほど心契の仲とこれまで思っていた人々には、少なからぬ意外であった。

「……さては、正成は河内へ帰ってしまいましたか」

と、中には彼がここに見えないのを惜しむ者もあり、宮はぜひなく言い足した。

「いやの。たしかに正成は戦はうまい。しかし彼のはどこまで自衛の戦だ。ただ辛抱づよいのが取柄だけだ。天下布武の大志もなし、政治などは、何もわかっている者ではない」