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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
また何も彼の不参が作戦上のさしつかえではなし、明日は手兵を送ってくるか、病をおかしてでも、自身見えるにちがいない」
もう外には鶏鳴が聞えた。
いつか明けていたのである。戦端はいつどこから切られるかもわからない。人々は戦備のため、いちど、それぞれの自邸へ別れて帰った。――この頃から京はチラチラ細かい雪になっていた。
雪は、ことしの初雪だ。十月二十二日である。寒さもこの冬はじめてといっていい。
こんな朝をいうのだろうか。唐詩人などがよくつかう
凍天
という語そのままな空でもある。盆地のせいもあろうが暗灰色ともなんともいいようない陰極の天地であった。風を交じえた粉雪なので、霏々と、雪には声があり、まだ凍て乾いている地上から逆さに白く煙って翔ける。
「へんだね、今日は」
「なにかこう?」
「六月七日の夜半みたいだぜ」
「また、はじまるのか」
「いやだね」
「つるかめ。つるかめ」
往来には人影もなく、氷柱の下がッている町家の暗い中では、そんなささやきもしているらしい。午になっても戸を開ける店はなかった。京の庶民の生態にはしぜんこうした保護神経が身についてしまっている。